チャネリング(gls-033)とは、湯が粉の層の一部にだけ通り道(チャネル)を作って流れる現象です。通り道の粉は湯に洗われ続けて過抽出になり、外れた粉は未抽出のまま——結果、苦渋と酸っぱさが同居する「濁った」カップになります。恐ろしいのは、レシピが完璧でも起きること。原因は粉の詰まり方・密度のムラ・注ぎの偏りといった『物理の準備不足』にあり、対策も物理で行います。均一抽出(kn-086)の最後の敵がこれです。

01 ドリップでの対策

ドリップでは3つの場面で水路が生まれます。(1)粉のセット時: ドリッパーに入れた粉が偏っていると最初から不均一——軽く振って平らにならす。(2)蒸らし: 乾いた塊が残ると、そこを湯が迂回する——粉の2〜3倍量の湯をまんべんなく当て、スワリングか一混ぜで乾きを潰す(kn-086)。(3)本注ぎ: 同じ点に注ぎ続けるとクレーターができ、壁の粉が乾く——「の」の字で満遍なく、ときどきスワリングで粉ベッドを平らに戻す。抽出後の粉ベッドが水平なら合格、穴や壁残りがあれば次回の修正点です。

02 エスプレッソでの対策

9気圧のエスプレッソ(kn-090)では、湯はわずかな密度差さえ見逃しません。対策は抽出前の『パックの品質』に集約されます。(1)ディストリビューション: バスケット内の粉の塊をほぐし均等にならす(針で撹拌するWDTツールが定番化)。(2)レベリング: 表面を水平に整える。(3)タンピング: 力より水平が命(gls-026)——傾いたパックは低い側に水路を作ります。抽出中に一部から先に液が噴き出す・ネズミの尻尾のように流れが暴れるのはチャネリングのサイン。対策はすべて「押す前」にあります。

03 ミルと微粉という根本要因

水路の遠因は粉そのものにもあります。粒度がバラバラだと密度ムラが生まれやすく、微粉の塊(クランプ)は水を弾く芯になる——つまり良いミル(kn-096)はチャネリング対策でもあります。静電気で固まった粉は、挽いた後に軽くほぐす・ミルからドリッパーへ直接落とさず一度カップ等で受けてから移す、で改善します。湿度の高い日は粉が固まりやすいなど環境要因もあり、「今日はなぜか変」の背景には、たいてい粉の物理が潜んでいます。