コーヒー生産と森林の関係は、両義的です。一方で、全日照栽培(サン・カルチベーション)のための開墾や、気温上昇で栽培適地が高地の森林へと押し上げられる圧力は、森林伐採の要因になりえます。生産量を増やすために森を切り開けば、生物多様性の喪失、土壌流出、炭素放出につながる。他方で、日陰栽培(シェードグロウン)のコーヒー畑は森に近い構造を保ち、渡り鳥や生き物の生息地となって生態系を支えます。コーヒーは、作り方次第で森の敵にも味方にもなるのです。

01 日陰栽培が守るもの

伝統的な日陰栽培の畑は、背の高いシェードツリーの下でコーヒーが育つ多層構造で、疑似的な森として機能します。北米では『バードフレンドリー』認証(スミソニアン渡り鳥センター)が、この日陰栽培を渡り鳥の越冬地保護と結びつけました。日陰樹は土壌を守り、落ち葉で栄養を循環させ、気温上昇や乾燥を和らげる『気候の緩衝材』にもなる。生物多様性・土壌・気候の三方に利く日陰栽培は、味の面(kn-032)だけでなく、環境保全の面でも再評価されています。木陰のコーヒーは、森を保つコーヒーでもあります。

02 森林保全型コーヒーへ

近年は、森林と共存するコーヒー生産の取り組みが広がっています。森の中で少量栽培する『フォレストコーヒー』(エチオピアなど)、既存の森を活かすアグロフォレストリー(森林農法)、森林破壊ゼロを約束する調達方針、レインフォレスト・アライアンス認証などです。EUでは、森林破壊に由来する産品の輸入を規制する動き(森林破壊防止規則)もあり、コーヒーも対象。生産者にはトレーサビリティの証明が求められるようになっています。『どこで、どう作られたか』が、森林保全の観点からも問われる時代です。消費者が森を守る一杯を選ぶことが、この流れを後押しします。