焙煎の進行を知る最大の手がかりが『ハゼ(クラック)』です。豆が内部の水蒸気圧で弾ける『パチパチ』という1ハゼ(ファーストクラック、約195〜205度)は浅煎りの入口。さらに火を入れると、豆の細胞構造が壊れる『ピチピチ』という2ハゼ(セカンドクラック)が起き、これが深煎りの領域です。焙煎士はこの音を聞き、豆の色・香り・温度計を合わせて『いつ煎り止めるか』を判断します。ハイローストは1ハゼ終わり〜2ハゼ前、フレンチローストは2ハゼの中——ハゼは焙煎度の物差しなのです。

01 『発達』という隠れた変数

同じ『中煎り』でも味が違うのは、焙煎度だけでなく『発達(ディベロップメント)』が異なるから。発達とは、1ハゼ以降にどれだけ時間をかけて豆の芯まで火を通したかの度合いです。発達が足りないと、色は中煎りでも内部が生焼けで、青臭さ・穀物臭・とがった酸(アンダーディベロップ)が残ります。逆に発達させすぎると、平坦で焦げた味に。適切な発達は、酸・甘み・ボディが調和した『火の通り切った』一杯を生みます。焙煎士の腕は、この芯までの火の通し方に表れます。

02 プロファイルは味のレシピ

焙煎プロファイルとは、時間軸に沿った温度と火力の記録・設計のこと。同じ生豆でも、序盤に火を入れて後半を伸ばすか、じっくり上げて短く締めるかで、酸を活かすか甘みを引き出すかが変わります。近年は焙煎機にセンサーとソフトを繋ぎ、温度上昇率(RoR=Rate of Rise)などをグラフで管理する『データ焙煎』が普及しました。とはいえ最後は人の感覚——同じプロファイルでも生豆の状態や天候で微調整が要り、焙煎は科学と職人技の両輪で成り立っています。