コーヒー栽培の歴史は、病害虫との戦いの歴史でもあります。最大の脅威が『コーヒーさび病(ロヤ)』。ヘミレイア・ヴァスタトリクスという真菌が葉に黄オレンジ色の斑点を作り、落葉させて木を弱らせます。19世紀にセイロン島(スリランカ)のコーヒー産業を壊滅させ、同島を紅茶生産に転換させた張本人。1970年代に中南米へ上陸し、2012年前後の大流行では中米の生産が激減、数十万人の雇用に打撃を与えました。気候変動で発生域が高地へ広がる懸念も指摘されています。
01 コーヒーベリーボーラー
もう一つの強敵が『コーヒーベリーボーラー(コーヒーノミキクイムシ)』。わずか数ミリの甲虫が実に穴を開けて内部に侵入し、種子(=豆になる部分)を食い荒らします。世界中のコーヒー生産地に広がる最も破壊的な害虫とされ、被害は収量と品質の両方に及びます。温暖化でこの虫の活動域と繁殖回数が増えるとの研究もあり、防除は年々難しくなっています。ほかにも根を侵すセンチュウ、枝を枯らすカンカー病など、コーヒーノキは多くの脅威にさらされています。
02 防除のアプローチ
対策は多層的です。品種面では、さび病耐性を持つカティモール・カスティージョ・F1ハイブリッドへの植え替え。栽培面では、風通しを良くする剪定、日陰樹の管理、罹病した葉や実の除去。生物的防除では、ベリーボーラーの天敵(寄生蜂や特定の菌)の活用や、虫を誘引するトラップ。化学的防除(殺菌剤・殺虫剤)も使われますが、コストと環境負荷、そして残留の問題があります。有機栽培では化学農薬を使えないため、耐性品種と栽培管理、生物的防除の比重が高くなります。