コーヒー品種の歴史は、偶然の発見から始まりました。マラゴジッペ(ブラジルで発見されたティピカの巨大粒変異)、ケント(インドの農園で見つかった耐病系統)、そして矮性変異のカトゥーラやパカス——20世紀半ばまでの「新品種」は、畑の中の偶然を見つけて増やしたものです。エルサルバドルの研究機関がパカスとマラゴジッペを人工交配して生んだパカマラ(1958年開発)は、意図的な品種づくりの初期の成功例といえます。

01 サビ病という宿敵

品種開発を加速させた最大の動機は、葉を枯らす真菌病「コーヒーさび病(ロヤ)」です。19世紀にセイロン島(スリランカ)のコーヒー産業を壊滅させ、同島が紅茶に転換する原因となったこの病気は、1970年代に中南米へ上陸。対抗策として、自然にできたアラビカ×ロブスタの雑種「ティモールハイブリッド」の耐性遺伝子を取り込んだカティモール、サルチモールなどの耐病品種群が各国で開発されました。コロンビアの「カスティージョ」はその代表格で、同国の畑の主力になっています。

02 F1ハイブリッドという希望

近年の最前線は「F1ハイブリッド」。遺伝的に離れた親同士(例: 野生エチオピア系×耐病品種)を交配した第一世代は、両親のいいとこ取り(雑種強勢)で、高い収量・耐病性と品評会レベルの風味を両立できることが分かってきました。センテニアルやスターマヤ、ムンドマヤなどが実用化されつつあります。課題は種子の生産コスト。F1は自家採種では性質が受け継がれないため、組織培養や専用採種園が必要で、小規模農家への普及が次の焦点です。