デカフェの難しさは、『カフェインだけを抜き、風味成分は残す』という選択性にあります。カフェインは水に溶けますが、風味成分も一緒に溶け出してしまう。この課題をどう解くかで、脱カフェインの製法は3系統に分かれます。いずれも焙煎前の生豆の段階で行われ、除去率や風味保持、コストが異なります。かつて『デカフェはまずい』とされたのは、初期の技術で風味成分まで失われたから。近年の技術進歩で、その常識は大きく変わりました。
01 水を使う方式
水系の代表が『スイスウォータープロセス』と『マウンテンウォータープロセス』です。原理は巧妙で、まず生豆を水に浸け、カフェインと風味成分を丸ごと溶け出させます。次にその水を活性炭フィルターに通してカフェインだけを吸着除去し、風味成分を溶かした水(グリーンコーヒーエキス)を作る。この風味豊かな水に新しい生豆を浸けると、風味成分は水と豆でつり合っているため溶け出さず、カフェインだけが豆から水へ移る——という仕組みです。薬品を使わず風味保持に優れるため、スペシャルティのデカフェで広く使われます。
02 二酸化炭素と溶媒
『超臨界二酸化炭素法』は、高温高圧で液体と気体の中間状態(超臨界)にしたCO2を使います。この超臨界CO2はカフェインを選択的に溶かし出す性質があり、風味成分をあまり損なわずに脱カフェインできます。設備コストは高いものの、大規模処理と高い風味保持を両立。もう一つが有機溶媒(酢酸エチルやジクロロメタンなど)を使う方式で、海外では一般的ですが、日本では特定の薬剤を使った脱カフェイン処理豆の輸入が食品衛生法上認められていないため、国内流通のデカフェは実質的に水方式とCO2方式です。酢酸エチルは果実由来のものが『シュガーケーン(サトウキビ)プロセス』として使われることもあります。