ゲイシャの物語は1930年代、エチオピア南西部ゲシャ村周辺で採取された野生系統が、耐病性研究のためにケニア・タンザニア・コスタリカの研究機関を渡り歩いたところから始まります。パナマには1960年代に導入されましたが、収量が少なく枝が折れやすいため、長らく「畑の隅の変わり者」でした。転機は2004年。ボケテのエスメラルダ農園が、標高の高い区画のゲイシャだけを分けて品評会「ベスト・オブ・パナマ」に出品したところ、審査員が「カップの中から花束が立ち上る」と絶賛。オークション史上最高値を更新し、世界のコーヒー観を一変させました。
01 香りの正体
ゲイシャの代名詞は、ジャスミンやベルガモット(アールグレイの香料)に例えられる華やかな香りと、澄み切った柑橘系の酸、シルクのような軽い口当たり。香気成分の分析では、フローラル系の化合物が他品種より豊富であることが報告されています。この個性は高標高(1,600m以上)で最もよく発現するとされ、同じパナマでも低い畑のゲイシャは平凡な味に留まることがあります。「ゲイシャなら何でも別格」ではなく、「高地×丁寧な精製のゲイシャが別格」というのが正確です。
02 パナマだけじゃないゲイシャ
現在はコロンビア、グアテマラ、エチオピア(里帰り栽培)、さらに台湾の阿里山まで、世界中でゲイシャが栽培されています。価格はパナマ・ボケテの著名農園がオークションで別次元(生豆1kgあたり数十万円の落札例も)、その他産地は比較的手が届く水準。日本のロースターでも100g3,000円前後からパナマ産を、2,000円前後から他産地のゲイシャを見かけます。飲むなら浅煎り・ハンドドリップ・ブラックが鉄則。香りが主役なので、少し冷ましてから口に含むと真価が分かります。