焙煎前のコーヒー豆は『生豆(グリーンコーヒー)』と呼ばれ、緑がかった状態で麻袋(通常60kgや69kg)や真空パックに詰められ、産地から消費国へ運ばれます。産地の農家・組合・輸出業者(エクスポーター)から、消費国の輸入業者(インポーター)を経て、ロースターへ。この間に品質検査、通関、船便での長距離輸送(数週間〜)が挟まります。生豆は適切に保管すれば1年程度は品質を保てますが、湿度と温度の管理が悪いと風味が枯れ、『枯れ豆(パスト・クロップ)』になります。鮮度は焙煎後だけでなく、生豆の段階から始まっているのです。

01 コモディティ市場という『相場』

大量に流通する汎用コーヒー(コモディティ)の価格は、ニューヨーク(アラビカ)とロンドン(ロブスタ)の商品先物市場で決まる国際相場(通称『Cプライス』)に連動します。この相場は天候・在庫・投機・為替で乱高下し、農家の収入を不安定にします。相場が生産コストを下回る『コーヒー危機』は繰り返し起き、農家が離農する原因にも。国際コーヒー機関(ICO)などが価格安定や生産者支援に取り組んでいますが、市場価格の変動リスクは、コーヒー生産の構造的な課題であり続けています。

02 スペシャルティのもう一つの経済

相場に翻弄されるコモディティ市場に対し、スペシャルティコーヒーは別の経済圏を作りました。品質(カッピングスコア)に応じて相場を超える価格が付き、カップ・オブ・エクセレンス(COE)のオークションでは突出したロットが破格の値で取引されます。ロースターが生産者と直接取引する『ダイレクトトレード』も、中間コストを減らして農家に高い対価を届ける仕組み。品質を評価して正当に払うこの流れは、農家に良いコーヒーを作る動機と安定収入をもたらし、相場依存からの脱却を助けます。生豆の値段は、『相場か、品質か』という二つの論理でできています。