アラビカの栽培品種の家系図をさかのぼると、その多くが「ティピカ」と「ブルボン」という2大系統に合流します。ティピカはエチオピアからイエメン、インド、ジャワ島、そしてアムステルダム植物園を経由してカリブ・中南米へ広がった系統。ブルボンは、イエメンからインド洋のブルボン島(現レユニオン島)に持ち込まれた木の子孫で、島の名前がそのまま品種名になりました。18世紀の帆船で運ばれた数本の苗木が、いま世界中のカップの中にいる——コーヒー品種史は、驚くほど細い糸から始まっています。
01 ティピカの個性
ティピカは「原型」を意味する名のとおり、クリーンで上品な甘さと、澄んだ酸が持ち味。ブルーマウンテン(ジャマイカ)やコナ(ハワイ)は今もほぼ純粋なティピカで、この系統の到達点といえます。ただし収量が少なく、サビ病(コーヒーの葉を枯らす真菌病)に非常に弱いため、中南米の畑では20世紀後半に多収品種へ置き換えられていきました。今日ティピカが残る産地は、「量より質」を選び続けた土地でもあります。
02 ブルボンの個性と子どもたち
ブルボンはティピカよりやや収量が多く、丸みのある豆と、キャラメルを思わせる甘さが特徴。ブラジルやエルサルバドル、ルワンダ・ブルンジで今も主力です。さらに重要なのは「子どもたち」の存在。ブルボンの突然変異や自然交配から、カトゥーラ(小型・多収)、ムンドノーボ(ティピカ×ブルボン)、カトゥアイ(ムンドノーボ×カトゥーラ)といったブラジルの主力品種が次々に生まれました。中南米の畑の大半は、いわば「ブルボン一族」で占められています。