コーヒー精製、特にウォッシュド(水洗式)は水を大量に使います。果肉除去、発酵後の洗浄、豆の運搬に清浄な水が必要で、豆1kgあたり数十リットルの水を使う場合もあります。水資源の豊かな産地では問題になりにくいものの、水の乏しい地域や乾季には、精製が地域の水利用と競合します。さらに、精製に使った水(果肉やミューシレージを含む排水)をそのまま川に流すと、有機物による水質汚染(富栄養化・酸素欠乏)を引き起こす——コーヒー生産には、見えにくい『水の問題』が伴います。
01 排水がもたらす汚染
精製排水は糖分と有機物に富み、放置すると微生物が分解する過程で水中の酸素を奪い、川の生態系に打撃を与えます。発酵で酸性化した排水は、下流の水質と農業にも影響します。かつては産地の川がコーヒー精製期に汚れることが常態化していた地域もありました。この問題への対応として、排水を沈殿池で処理してから放流する、嫌気性処理でバイオガスを回収する、果肉を堆肥やカスカラに転換する(kn-035)といった取り組みが進んでいます。廃棄物を資源に変える循環型の発想が、汚染対策と結びついています。
02 節水型精製への転換
水使用そのものを減らす技術も普及しています。代表が『機械式ミューシレージ除去』。発酵槽で微生物にミューシレージを分解させる代わりに、専用機械(デミューシレージャー)で物理的に削り取る方式で、水と時間を大幅に節約できます。ナチュラルやハニープロセスは、そもそも水をほとんど使わない精製として、水問題の観点からも再評価されています。ただし機械除去は発酵由来の風味が出にくく、味の設計とのトレードオフも。水資源・環境負荷・風味・コストのバランスを取りながら、精製は持続可能な方向へ進化しています。