コーヒーとして飲むのは果実の種子だけ。果肉・果皮の部分は、精製の過程で大量に発生する副産物として、長らく廃棄されるか堆肥にされてきました。この乾燥させた果皮・果肉を煮出した飲み物が「カスカラ(スペイン語で『殻・皮』)」です。イエメンやエチオピアでは古くから「キシル」などの名で果皮を煮出す文化があり、実はコーヒー(種子)を飲むより古い飲用形態だったとも言われます。近年、スペシャルティ業界がこれを「新しい商品」として再発見し、世界のカフェメニューに登場するようになりました。
01 カスカラの味とカフェイン
カスカラの味はコーヒーとは大きく異なり、ローズヒップやハイビスカスティー、ドライフルーツ(レーズン・チェリー)を思わせる甘酸っぱさが特徴です。ホットでもアイスでも、ハチミツやスパイスと合わせても楽しめます。カフェインは含まれますが、抽出されるコーヒーよりは少なめとされます。副産物とはいえ、良質なカスカラを作るには果肉を丁寧に乾燥・保管する必要があり、精製と同じ品質管理が求められる「もう一つの農産物」です。
02 循環型コーヒーへ
副産物の活用は、環境と生産者収入の両面で意味を持ちます。果肉の廃棄は水質汚染(発酵による水の富栄養化)の一因でしたが、カスカラや堆肥、バイオガス、さらには小麦粉代替の「コーヒーフラワー」として使えば、廃棄物が収入源に変わります。パーチメント(内果皮)は乾燥時の燃料に、シルバースキン(チャフ)は工業原料に——コーヒー一粒をまるごと使い切る「循環型(サーキュラー)」の発想が、産地の持続可能性を高める新しい潮流になっています。