「バールの一杯を家庭で」という難題に、ネスレは「一杯分の粉を密封カプセル化し、専用マシンで抽出する」という答えを出します。1986年設立のネスプレッソは、当初オフィス向けで苦戦し、長い雌伏の時代を過ごしました。転機は1990年代後半からの家庭市場への転換とブティック戦略、そして2000年代の会員制とスター俳優を起用したブランド戦略です。

カプセルの本質は「鮮度の外注」(kn-115)でした。開封後の豆の劣化(kn-010)という家庭の最大の弱点を、一杯分ずつの密封で解決したのです。互換カプセル市場の勃興、アルミリサイクル網の整備、他社方式との規格競争——カプセルはコーヒーの「ソフトとハード」のビジネスモデルを飲料界に持ち込みました。日本ではドリップバッグ(kn-013)という紙の「一杯分」文化と並走し、個食化する暮らしの定番になっています。