ブルボン一族の広がり方には型があります。それは「矮性変異の発見」。ブルボンは背が高く収穫しにくい木ですが、ときどき背の低い(節間が詰まった)変異体が生まれます。低い木は収穫が楽で、密植でき、単位面積あたりの収量が上がる——農家にとって夢のような性質です。ブラジルで見つかったカトゥーラ(1930年代に選抜)、エルサルバドルのパカス(1949年発見)、コスタリカのビジャサルチは、いずれも独立に発見されたブルボンの矮性変異。「同じ突然変異が各地で繰り返し見つかった」という、生物学的にも興味深い現象です。

01 交配で生まれた実力者たち

ブラジルの研究機関は、ティピカ系×ブルボンの自然交配から生まれた多収品種ムンドノーボ(1940年代普及)と、そのムンドノーボにカトゥーラの低さを掛け合わせたカトゥアイ(1970年代普及)を送り出しました。この2品種は現在もブラジルの生産の中核です。カトゥアイには赤実(ヴェルメーリョ)と黄実(アマレロ)があり、豆袋に「イエローカトゥアイ」とあればその黄実系統。風味は概してバランス型で、ナッツやチョコレートの穏やかな甘さがブラジルらしさの土台を作っています。

02 味の家族的傾向

一族に共通するのは、丸みのある甘さと素直な味の構造。そのうえで、カトゥーラは標高が上がると明るい柑橘系の酸が際立ち(コロンビアや中米の高地で顕著)、カトゥアイは安定感とボディ、パカスはやわらかな口当たりが持ち味とされます。どれも「派手さより調和」のタイプで、ブレンドの土台としても、毎日のシングルオリジンとしても頼れる存在。ゲイシャ的な華やかさとは別の軸の、コーヒーらしいおいしさの本流です。