コーヒーノキは、ジャスミンに似た香りの白い花を咲かせます(kn-016)。開花はわずか2〜3日と短く、乾季から雨季への変わり目の雨(ブロッサムシャワー)が引き金になります。アラビカは自家受粉できるため、雨さえ来れば一斉に開花・結実しますが、雨のタイミングがばらつくと、開花も結実も分散してしまう。開花から果実の完熟までは約6〜9か月。この間、天候・病害虫・栄養状態が、最終的な収量と品質を左右します。花は、その年の実りの予告なのです。
01 一本の木の生産量
一本のコーヒーノキから採れる生豆は、年間およそ1〜2kg程度。これはカップにして約100〜200杯分にすぎません(kn-016)。しかも、その量を得るには数年の育成、日々の管理、完熟果だけを選ぶ収穫の手間がかかります。毎朝一杯を1年飲むと、木2〜3本分の1年の実りをまるごと消費している計算に。コーヒーが世界で20億杯以上飲まれる裏には、膨大な数のコーヒーノキと、それを世話する無数の農家の労働があります。一杯の手軽さと、その生産の大変さのギャップは、意識しないと見えてきません。
02 収量と品質のトレードオフ
収量を増やすことと、品質を高めることは、しばしば相反します。多収品種を密植し、化学肥料と全日照で育てれば収量は上がりますが、実の成熟が速く風味が薄くなりがち。逆に、日陰でゆっくり育て、完熟果だけを選び、収量を抑えれば、密度が高く複雑な豆になる。農家は、市場価格・栽培コスト・品質戦略を天秤にかけ、『量を取るか、質を取るか』の判断を迫られます。スペシャルティの高価格は、この『質のために量を犠牲にする』選択への対価という側面もあります。豊作の年に相場が下がり、農家が報われないという皮肉も、収量問題の一面です。