世界の等級制度は、測っているものが国ごとに違います(kn-014)。『大きさ(スクリーン)方式』——ケニアAA/AB(kn-138)、タンザニア(kn-140)、コロンビアのスプレモ/エクセルソ(kn-144)。ふるいの目の大きさで分けるだけで、味の直接評価ではない。『欠点数方式』——エチオピアG1/G2(kn-137)、ブラジルNo.2(kn-142)、インドネシア。生豆300g中の欠点(kn-047)を数える、クリーンさの指標。『標高方式』——中米のSHB/SHG(gls-067)。涼しさ=密度の間接指標(kn-156)。『総合方式』——ハワイやジャマイカ(kn-135)のように複数基準+産地限定で名乗りを管理する型です。

01 各方式の「効き目」と限界

等級は便利ですが、それぞれ盲点があります。大きさ方式の盲点——粒が揃うのは精製・選別の丁寧さの証だが、大粒=美味ではない(ケニアABがAAに勝つ例、bean-015)。欠点方式の盲点——クリーンさは保証しても、風味の個性や甘さは測っていない。標高方式の盲点——緯度と品種を無視すると誤読する(kn-156)。総合方式の盲点——ブランド管理のコストが価格に乗る(kn-135)。つまり等級は『下限の保証』であって『上限の予告』ではない——スペシャルティがカッピングスコア(gls-089)という「味の直接評価」を併用するのは、この限界を埋めるためです。

02 等級の読み替え実践

店頭での読み替え表: 『ケニアAA』→大粒選別。同じ生産者のABがあれば飲み比べ候補。『エチオピアG1』→欠点僅少。ナチュラルのG1は果実味のクリーンな上位互換(kn-137)。『グアテマラSHB』→高地産の密度。中米の実質標準(kn-145)。『ブラジルNo.2 スクリーン17/18』→同国の実質最上位規格(kn-142)。『スプレモ』→大粒だが、産地名(ウイラ等kn-144)の方が味の情報量は多い。等級表記しかない豆より、農園・品種・精製・標高が併記された豆(kn-015)の方が「語る意思のある豆」——等級は最初のふるい、決め手は情報の厚みです。

03 等級の外の世界

現代の最上位市場は、実は国家等級の「外」で動いています。COE(kn-067)入賞ロットやオークションロット(kn-146)は、国の等級ではなくカッピングスコアと農園名で取引される。マイクロロット(kn-075)も同様です。国家等級が「輸出の標準化」のために生まれた20世紀の道具だとすれば、スコアとトレーサビリティ(kn-060)は「個別性の価値化」という21世紀の道具——両者は対立ではなく階層です。日常の豆は等級で効率よく、特別な豆はスコアと物語で深く。二つの物差しを使い分けられれば、等級学は卒業です。