ナチュラル(乾式)は、収穫した実を果肉ごと天日で乾燥させ、カラカラになってから脱殻して生豆を取り出す、最も古く原始的な精製法です。水をほとんど使わないため、水資源の乏しいエチオピアやイエメン、ブラジルで発達しました。果肉に含まれる糖と風味成分が乾燥中に種子へ移るため、ブルーベリー・ストロベリー・熟したワインのような、濃厚で甘い果実味が生まれます。かつては「安価な豆の雑な精製」と見なされた時期もありましたが、丁寧に作られたナチュラルはいまやスペシャルティの花形です。

01 乾燥という綱渡り

ナチュラルの難しさは乾燥にあります。果肉が付いたまま乾かすため、水分が抜けきるまで数週間かかり、その間に均一に乾かさないとカビや過発酵、望まない発酵臭が出ます。実を薄く広げ、一日に何度も攪拌(かくはん)し、雨や夜露を避ける——この地道な管理の質が、フルーティーな高級品と欠点だらけの安物を分けます。近年は地面ではなく通気性の良い「アフリカンベッド(高床式の乾燥棚)」で乾かすことで、下からも風が通り、均一で清潔な乾燥が可能になりました。

02 果実味という個性の源

同じ農園・同じ品種でも、ウォッシュドが『クリーンで直線的』なのに対し、ナチュラルは『甘くふくよかで曲線的』。この違いは糖分の移行と、乾燥中の穏やかな発酵に由来します。エチオピア・グジやシダモのナチュラルが放つイチゴジャムのような香り、ブラジル・ナチュラルのナッツとチョコの甘さは、精製が生む個性の代表例。近年はナチュラルの発酵を意図的にコントロールする実験的精製(後述の嫌気発酵など)の土台にもなっており、精製の可能性を切り開く最前線でもあります。