コーヒー栽培は、種子を選ぶところから始まります。優良な木から採った完熟果の種子(パーチメント付き)を苗床にまくと、1〜2か月で発芽。双葉が種皮を頭に載せたまま立ち上がる姿は『ソルジャー(兵隊)』と呼ばれます。苗床では日除けの下で数か月育て、本葉が数対ついた頃にポットや畑へ移植。移植から最初の本格的な収穫まで、さらに3〜4年かかります。この間、収入を生まない木を世話し続けるのが、コーヒー農家の投資です。品種の選択はこの時点で決まるため、何を植えるかは数年後の経営を左右する重大な判断になります。
01 接ぎ木とクローン繁殖
種子から育てる実生(みしょう)繁殖のほか、栄養繁殖の技術も使われます。ロブスタの台木にアラビカを接ぐ『接ぎ木』は、センチュウ(根を侵す害虫)への耐性を得る手段。優良個体を挿し木や組織培養でクローン増殖する方法は、F1ハイブリッドのように種子では性質が受け継がれない品種の普及に不可欠です。組織培養は無菌環境で大量増殖できる一方、設備コストが高く、小農への普及が課題。品種の力を畑に届けるには、繁殖技術という『物流』が伴わなければなりません。
02 剪定と木の管理
植えた後も手入れは続きます。剪定(せんてい)は、木の形を整えて収穫しやすくし、風通しを良くして病気を防ぎ、実をつける枝を更新するための重要作業。放置すると木は高く伸びて収穫困難になり、収量も落ちます。老木は幹を思い切って切り戻す『カットバック(センターカット栽培)』で若返らせ、数年かけて再生させます。日陰樹の管理、施肥、除草、灌漑——コーヒー畑は、収穫期以外も一年中手がかかる。一杯の背後には、木の一生に寄り添う農家の日々の労働があります。