世界のコーヒーは、大きく二つの経済圏に分かれています。一つは『コモディティ(汎用品)コーヒー』。大量に生産・流通し、価格は国際商品市場の相場(Cプライス)で決まります(kn-054)。もう一つが『スペシャルティコーヒー』。品質(カッピングスコア)に応じて相場を超える価格が付き、生産情報が明確な高品質豆です(kn-009)。この二つは、同じ農作物でありながら、価格の決まり方も、生産者との関係も、消費のされ方もまったく異なる、別の世界なのです。
01 コモディティ経済の構造と課題
コモディティコーヒーは、世界の流通量の大半を占めます。豆は複数産地でブレンドされ、由来をたどれないのが普通。価格は天候・在庫・投機・為替で乱高下する国際相場に連動し、生産者の収入は不安定です。相場が生産コストを下回る『コーヒー危機』が繰り返し起き、多くの小農が貧困や離農に追い込まれてきました。効率と量を追求する大規模生産は、時に森林伐採や労働問題とも結びつく。安く大量に飲めるコーヒーの裏には、こうした構造的な課題が横たわっています。
02 スペシャルティ経済という対案
スペシャルティは、この構造への対案として発展しました。品質を客観的に評価し(カッピング)、トレーサビリティを確保し(種からカップまで)、品質に見合った対価を生産者に払う。カップ・オブ・エクセレンス(kn-067)のオークションやダイレクトトレードは、相場を超えた価格を農家に直接届ける仕組みです。『良いコーヒーを作れば報われる』という動機付けが、品質向上と生産者の生活改善の好循環を生む——これがスペシャルティの理念です。ただし世界全体で見ればスペシャルティは数%にすぎず、大多数のコーヒー農家は今もコモディティ経済の中にいます。この格差をどう縮めるかが、業界全体の課題です。