RTD(Ready to Drink=そのまま飲める)コーヒーは、工場で抽出・調合・殺菌し、容器に詰めて流通させる製品群です。1969年にUCCが世界初のミルク入り缶コーヒーを発売して以来、日本は世界に類を見ないRTDコーヒー大国になりました。自動販売機とコンビニの発達が、ホットでもアイスでも飲める缶コーヒーの巨大市場を育てたのです。近年は缶からペットボトル、そして紙容器やチルドカップへと容器が多様化し、無糖・微糖・ブラックの充実、ラテ系の高級化が進んでいます。

01 殺菌と品質保持の技術

RTDコーヒーの難しさは、常温で長期間、品質を保つこと。缶コーヒーは充填後に加熱殺菌(レトルト)しますが、この加熱がコーヒーの風味を変える『レトルト臭』の原因にもなります。各社はこれを抑えるため、抽出方法・調合・窒素充填(酸化防止)・容器素材を工夫してきました。ミルク入りは特にデリケートで、乳成分の安定化技術が味を左右します。ペットボトルやチルドカップでは、無菌充填や低温流通により、加熱ダメージを抑えた『淹れたてに近い』風味を目指す製品が増えています。

02 市場の進化とスペシャルティ化

RTDコーヒー市場は、『とにかく手軽に』の時代から『質も求める』時代へ移りました。無糖ブラックの定着、コンビニのカウンターコーヒー(ドリップ式)の登場、スペシャルティ豆を使ったボトルコーヒーやコールドブリューの高価格帯製品——RTDは低価格の代名詞から、多様な選択肢へと広がっています。コンビニのチルドカップのラテやコールドブリューは、カフェの一杯に迫る品質のものも。日本のRTD文化は、コーヒーを『いつでも、どこでも、それなりの質で』飲める環境を作り上げました。